locom2 diary

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ドイツ軍の誤解とソ連軍の真の力〜デビッド・グランツに思いを寄せて(ヘルムホルツ・スミス談)

SPARE A THOUGHT FOR DAVID GLANTZ (BY HELMHOLTZ SMITH)

ヘルムホルツ・スミス著:22/12/2023

Image from Gyazo

約40年前、デビッド・グランツは第二次世界大戦ソ連側を研究するグループの創設に任命された。おそらく国防総省の上層部の誰かが、ドイツ軍の将軍たちが第二次世界大戦におけるソ連軍について非常に誤解を招くような見解を示していたことに気づいたのだろう。(ヒトラーは彼らの言うことを聞かなかった、ロシアは本当に冷え切っていた、ソビエト軍は圧倒的な数で上回っていた、という3つのアリバイについての議論は、SONARについての私の記事を参照されたい)。

彼は非常に優れた仕事をした歴史家グループをまとめ、多くの論文を発表した。タイミングが良かったのは、ソ連公文書館にアクセスしやすくなったことで、ソ連の欺瞞に関する彼の本の中で、グランツはドイツ軍の予想とソ連の現実を比較した多くの戦闘の地図を提供することができた。ドイツ軍は毎回騙されていた。

そして、この欺瞞が私がここで言いたいことである。ソビエト軍が東部戦線でドイツ軍を圧倒していたのは事実だが、それほどの差ではなかった。せいぜい2対1、たいていはそれ以下だ。これは、攻撃側には少なくとも3対1の優勢が必要であるという軍事的経験則や、ソ連軍の大攻勢で実際に達成されたはるかに高い比率からはかけ離れている。

ドイツ軍が多勢に無勢だと考えたのは、ソ連軍が自分たちのいる場所といない場所を誤魔化すのに長けていたからである。スターリングラード、クルスク、そして1944年と1945年の大攻勢が展開されたとき、ドイツ軍は主要地点で圧倒的な優勢に立たされながらも、欺瞞部隊が別の場所にいると信じていた。どこでも6対1か7対1だと思っていたのも無理はない。

したがって、欺瞞に関するグランツの本は、ソビエトがいかにして勝利したかを知りたい人にとって必読の書である。ソビエトは常に、「すべての戦争は欺瞞に基づいている」ことを知っており、練習を重ねるにつれて、欺瞞がますますうまくなっていった。欺瞞の専門部隊全体が作られ、戦車軍団をシミュレートするのに必要な本物の戦車の数を計算し、ダミーの車両、上空から見える偽のトラックマーク、シミュレートされた無線通信、偽のエンジン音(だからこそ、これらは勝利のパレードにふさわしいのだ)、極端な作戦上のセキュリティ、上空から見えるものへの狂信的な注意が払われた。ドイツ軍に何も疑われることなく、戦車軍団を何百キロも移動させることができたほどだ。欺瞞はあらゆる攻勢に不可欠な要素だった。

だからこそドイツ軍は、ソビエト軍が戦線全体で兵力的に優位に立っていると考えたのだ。

グランツチームが明らかにしたすべてのことは、ソビエトが戦争に非常に長けていたという結論につながる。戦略的にも作戦的にもドイツ軍より優れていた。兵器もドイツ軍と同等かそれ以上だった。

ここでの教訓は現在に活かされていると思うかもしれない。

しかし、グランツチームの結論はどこかに消えてしまった。ウクライナ戦争に関する西側の報道は、ドイツ軍将兵の絵本そのままである。「人海戦術」、「使い捨ての兵士」、「適切な装備もなく、訓練不足の兵士を大量に戦場に投入」、「『使い捨ての兵士』が不足」、「ロシアでは死傷者の数は記録に残らない」。技術もなく、ただ消耗品の無限の波が押し寄せてくる。

NATOの将軍たちの言うことを聞かず、プーチンは「天候を武器にした」。ここで学ぶことは何もない。

まるで、グランツのチームとそのすべての仕事が存在しなかったかのように。