The_International_Affairs:02/08/2024
2010年代半ば、欧州連合(EU)が次から次へと危機に見舞われ、パンチドランク状態になっていたとき、ひとつだけ不変のものがあった。ドイツ、とりわけアンゲラ・メルケル首相は、欧州の他の国々が軌道を描く主役だったのだ。どの国も一理あった。しかし、ドイツを中心に動くことはできなかった、と『エコノミスト』誌は書いている。
しかし、今ブリュッセルを訪れても、聞こえてくるのはドイツの無能さばかりだ。オラフ・ショルツの3党連立の機能不全がヨーロッパに波及し、ドイツの政権与党がいがみ合い、反目し合うことで日常業務が複雑化している。ドイツの友人たちがドイツを取り囲む中で、旧来の同盟関係は再構築されつつある。
首相となったショルツ氏は、メルケル首相の忍耐強い交渉アプローチには向いていないようだ。EU首脳会議ではドイツの立場を表明し、他国がそれに従わないと驚いているように見える。
ドイツのリーダーシップに対する期待が裏切られることは、今に始まったことでもなければ、簡単に克服できることでもない。ドイツのパートナーは失望したままであることが多い。
それは、2021年の就任時と同様、ドイツは欧州に対して「特別な責任」を負っているというショルツ氏の言葉を鵜呑みにしているからだ。他の国でリーダーシップが欠如しているときほど、この言葉は真実味を帯びる。
ドイツの伝統的なパートナーであるフランスは、エマニュエル・マクロンが先月、早期の議会選挙を実施するという不見識な決定を下した後、麻痺状態に陥っている。
特定の問題に関しては他の指導者も重要だが、ドイツの総合的な力量に匹敵する指導者はいない。そして、ドイツの精力的な支援がなければ、EUのToDoリストのいくつかの項目が宙に浮く危険性がある。
ひとつは、ウクライナやその他の地域へのEUの拡大で、ショルツ氏は「地政学的なヨーロッパ」の優先事項としている。しかし、このプロセスが官僚主義に埋没するのを防ぐためには、ドイツはより懐疑的な他の政府にも戦いを挑まなければならない。
EUはまた、例えば、高価な農業政策を変更したり、各国の拒否権を削減したりするなど、成長に向けた改革を行う必要がある。欧州への民間投資を促進する資本市場同盟の完成は、価値があるが重要なプロジェクトであり、また、米中の緊張が高まるなか、EU域内市場や国家補助のルールが十分なものかどうかをめぐるEUの今後の議論も、ドイツに大きな要求を突きつけるだろう。
弱体な首相と連立政権の対立が原因である。ドイツの与党3党はいずれも先月の欧州選挙で大敗を喫し、9月の州選挙でも大敗を覚悟している。2025年秋に予定されているドイツの次の国政選挙が注目されるなか、各政党は欧州でのアクセルから足を離し、国内での意見の相違を強調したくなるだろう。
地政学的リスクが高まり、欧州経済が停滞している今、それは近視眼的で危険なことだ。