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アラステア・クルーク⚡️「速く動き、壊す」:新たな教義が根付く、強制支配の新時代

strategic-culture.su

アラステア・クルーク著:08/10/2025

Image from Gyazo

✒️要約:

  • 西洋では「速く動き、壊す」という攻撃的な新政治教義が主流化し、従来のルールや倫理を無視する方向に進んでいる。
  • 米国とイスラエルは軍事・制裁面で急進化し、中東覇権やイラン封じ込めへと動いており、内政でも文化戦争的な強硬ポピュリズムが台頭している。
  • 欧米諸国はロシア脅威を煽りながらも、実際には社会も指導層も本格的な戦争への覚悟を欠いている。

【本文】

西側世界では、忍び寄るように、雷鳴のような変化が進行している。新たな政治的教義が根を張ったのだ。西洋の保守派(そして若い)ポピュリストの思考は、荒々しく、冷淡で、きわめて非情、そして寛容さがはるかに欠けたものへと再構築されている。

この教義は、「支配的」であることを志向し、意図的に強制的で急進的なものとなっている。米国の利益(つまりより多くの収益)となるかどうかを試すべく、既存の秩序の要素を空中に投げ上げてみる――そんな姿勢すらみられる。

いわゆる「ルールに基づく秩序(Rules-Based Order)」の設計図は、(そもそも物語以上に本当に存在したことがあるのかはさておき)破棄された。今日のそれは、限界なき戦争――ルールもなく、法もなく、国連憲章への完全なる軽蔑の上にある。特に倫理的境界は、弱さや「道徳的相対主義」として一部の西洋で一蹴される。対立者を呆然とさせ、身動きできないようにすることが主眼なのだ。

並行して、イスラエルや米国の外交政策にも根本的な変化が生じている――ルールを意図的に無視し、相手をショック状態に陥れる。速く動き、壊す。ここ数か月、イスラエルヨルダン川西岸、イラン、シリア、レバノン、イエメン、カタールチュニジアなどで軍事力を行使してきた――ガザ以外にもだ。6月には、米国とイスラエルが、IAEAの保護下にある核不拡散条約署名国(イラン)の核施設を爆撃した。

この「速く動き、壊す」現象は、6月12日に米国の支援を受けたイスラエルのイラン奇襲でも明らかだった。また、驚くほど素早い官僚的手続きにも現れていた――JCPOA(イラン核合意)の欧州3カ国が、JCPOAに基づく全制裁の「スナップバック」を発動したのだ。イランによる外交努力は、容赦なく踏みにじられた。

このスナップバック制裁の発動は、18日にJCPOA枠組み全体が「消滅」する「サンセット」直前のタイミングを先取りするため、急がれて強行された。

ロシアや中国は、米国主導によるスナップバック策を違法で手続き的に欠陥があると見ており、法的には「存在しない行為」だと考えている――だが現実は冷徹だ。これはイランを、米国・イスラエルの「最後通牒」へ否応なく追いやる。つまり、完全屈服するか、圧倒的軍事攻撃を受けるか、の二者択一が迫られる。

この新しい支配教義は、西側の財政危機から生まれたものだ――しかし、やけっぱちの産物ゆえ失敗に終わるかもしれない。西側で進行中の「体制側への反発」は、進歩派や官僚的テクノクラートが思うような「残念な白人の反撃」によるものではない。

ジュリアーノ・ダ・エンポリはFTでこう書いた:

「最近まで経済エリート、金融業者、起業家、大企業の経営陣は、右派左派問わず、穏健で合理的、見分けがつかないテクノクラート的な政治家集団に頼っていた……彼らはリベラル民主主義の原則に基づき、時には社会的配慮も加味した市場原則に従い国家を統治していた。それがダボス合意(Davos consensus)だった。」

グローバル・リベラリズムとその幻想、そしてテクノクラート統治構造の崩壊は、新エリートの目から見れば「テクノクラートの専門家領域は現実に根差してもおらず、無能でもあった」と確定しただけだった。

つまり、「ルールに基づく国際秩序」の傘戦略は終わりを迎えた。新時代は強制的支配の時代――イスラエルや米国によるものだ。この教義の核はイスラエルの「支配」であり、他国は論理的に「服従」せねばならない。これは金融的もしくは軍事的圧力によって達成されるべきものであり、米国が国防総省(Department of Defence)から「戦争省(Department of War)」への名称変更を象徴している。

「新たな米国のテクノロジーエリートであるムスクやザッカーバーグ、サム・アルトマンらは、ダボステクノクラートとは何も共通しない。彼らの人生哲学は現存秩序の熟練管理に基づくものではなく、むしろすべてを空中に投げ上げたいという抑えがたい欲望を糧にしている。秩序、慎重さ、ルールの尊重――こうしたものは、速く動き壊すことで名を馳せた人々にとっては呪われたものなのだ」とダ・エンポリは詳述する。

テック支配層の本質や生い立ちは、むしろナショナリストのポピュリスト指導者(トランプ、ネタニヤフ、ベン・グヴィール、スモトリッチ)、そして違った形では福音派(チャーリー・カークの出自)に近い。彼らが集団として嫌悪する、ダボスの穏健な政治階層とはまったく異なる。

カークは「自分は神から文化戦争の闘士になる使命を授けられた」と信じていた。「癒す人もいれば、壊れた結婚を修復する人もいる。しかし、私の使命は『悪と闘い、真理を宣言すること』だけだ」と語る。ある評論家は「イエスの支配を目的とした福音主義の政治化」と呼んだ。

ホワイトハウス副首席補佐官のスティーブン・ミラーは「チャーリーが亡くなった日の天使の涙は、私たちの心に炎をともした。その炎は正義の怒りとなり、敵は理解できない」と述べた。

では、この荒々しく、冷淡で、感傷抜き、合意志向なき新たな政治教義を受け入れる西側の様々な派閥に共通するヴィジョンとは何なのか。

中東のパズルをこのような野蛮な形で空中に投げ散らす目的は何か、世界がガザで目撃している通りだ。イスラエルの地域覇権と米国による同地域のエネルギー資源支配――これが目的なのか?確かにそうだ――だが、それだけではない。

トランプ陣営、イスラエル右派、そしてこれを支援するユダヤ系億万長者らの新教義は、さらに上位の「戦争目的」がある。単にイスラエルの「支配」や他国の「服従」にとどまらず――米国特使トム・バラックの言う通り、それは「イランの制圧」が伴う。だからこそスナップバックは「イラン隷属への大戦」の準備なのだ。

米国系ユダヤ人の億万長者は、以前ザイオニスト・オブ・アメリカ(ZoA)会議で、より広域な戦争の可能性を語っていた。ロバート・シルマンは、ZoAへの多額資金提供は「イスラエルユダヤ人の敵対者への対決――イスラエルを破壊しようとするイスラム主義者、およびユダヤ人を破壊しようとする急進左派への防衛」に使われる、と述べた。

中東を巻き込むこの大混乱は、トランプのベネズエラへの強硬路線(アルゼンチンとの蜜月も同時進行)とも関係があるか?答えはイエスだ――要点は、ベネズエラの巨大な石油埋蔵量とアルゼンチンのシェール油田を米国の支配下に置くことで、米国のグローバルなエネルギー優位を確保し、増大する財政赤字リスクを緩和することだ。

このベネズエラ対立は中東プロジェクトとつながっている。米州全域を米国の「勢力圏」に再編し、中東とともに米国の支配領域へと統合するという広域的ヘゲモニー戦略の一環だ。

どうして西側はこのような好戦的で支配志向の地点まで来てしまったのか?発端となる形而上学的転換は、米国が「強欲、公平、自由、支配」をめぐり思索した時代にある。イヴァン・オスノスが『The Haves and Have Yachts』で論じたように、過去50年の間にオリガルヒやテック支配層は「富を蓄積する能力への制約」を否定し、「巨大な資源を持つ者には市民への特別な責任が伴う」という発想を放棄した。

彼らが受け入れたのは、各人が自己責任で自分の運命を切り開く「リバタリアン的倫理観」であり、富の享受権を当然のものとしている。より重要なのは、信条を捨てながらも「自分の資金で政府や社会をテクノ自律ビジョンに沿って形作る特権」を維持している点だ。オスノスの本が描くのは「金が金を生む」という単純な算数だ。

テック支配層が得た教訓は次の通りだ。「国家や他の組織が無能になれば、その政治的硬直性の治療法は対話や妥協ではない。ローマ時代の『proscriptio(制裁)』こそ唯一の答えだ」。スッラはこれを知り、シーザーは完成させ、アウグストゥスが制度化した。エリートの資産を没収し、従属を強いる……さもなくば排除するだけ。

現代のトランプ派とテックエリートは、古代の「偉大さ」――個人の偉大さ――と、それが文明にもたらしうる貢献への憧れにとりつかれている。そこには必ず「アウトサイダー」的存在が、何か破壊的で超常のエネルギーを持ち込むという要素が強くある。

これを読んで真っ先に思い浮かぶのは「トランプ」だ。今日のポピュリズム保守とアナーキー的急進主義には明白な親近性がある。ここで疑問が浮かぶ――常軌を逸した政策の激変、絶えない不確実性、Truth Socialでの気まぐれ投稿……本当に最後のあがきなのか?それとも、より反逆的で、急進的な「世界金融リセット」が仕込まれようとしているのか?

「今この瞬間から、新たに復活した戦争省(Department of War)の唯一の使命はこれだ。戦い、備え、勝利を目指す――容赦なく、妥協なく、その追求のために」――米国戦争省長官は火曜日、ワシントンで将軍らに向けこう述べた。

世界は炎に包まれ、欧州では恐怖が最大限まで煽られている。どこでも「ロシアが脅威だ」と叫ばれ、「ロシアがどこにでも潜んでいる」とされる。本当に「備え」られているのか?それとも欧州による脅しの瀬戸際外交で、米国も巻き込んでロシアの解体を目指しているだけか?

ソ連の崩壊は「旧」ヨーロッパ――大国たち――に東欧、バルカン、旧ソ連諸国の巨大市場と資源、安価なエネルギーを与えた。EUプロジェクトそれ自体も、金の匂い――容易な繁栄の誘惑――で成り立っていた。

その繁栄が弾け(トランプがその破裂を大きく加速した)、ロシア市場の分割なき今、フランス、ドイツ、イタリアがかつての政治的影響力や世界的地位を維持できるのかは疑問だ。もっと重要なのは「どうやって再選できるのか」と、欧州各国首脳が自問していることだ。

ロシア脅威説の瀬戸際戦術は、欧州によって「赤ゾーン」まで押し上げられている。だが、ヨーロッパも米国も、本当の戦争に耐え得る気概を持っているようには見えない。ましてや、その国民はさらに持っていない。]