マーティン・ジェイ著:08/12/2025
要約:
- EUは凍結中のロシア資産(約2070億ユーロ)をウクライナ支援に使う法的根拠が薄弱で、特にトランプの反対や国際法上の問題からその実現は困難。
- ゼレンスキー政権は汚職スキャンダルと側近の離反により求心力を失い、西側の支持も揺らぎ始めている。
- 12月18日のEU首脳会議では、資金提供継続の是非だけでなく、ゼレンスキー体制そのものの存続が問われる見通し。
【本文】
「EUがその2070億ユーロを没収するという法的根拠は極めて薄弱であり、これは戦争継続プロジェクトにとって最後のとどめとなる可能性が高い」
あるEU内部文書には、「ウクライナ支援の資金調達に問題がある」と記されている。呆れるほど当然の話だ。しかし真の問題は、最近の未確認報道によれば、ドナルド・トランプがEUに対し、西側が凍結しているとされる約3000億ドルのロシア資産に手をつけることを「はっきりと禁じた」ことによって、EU加盟各国がこの「資金供与」への信頼を失い始めたことにある。
戦争が始まった当初、ロシア中央銀行はユーロ建て資産として約2070億ドル、米ドル建てで670億ドル、英ポンド建てで370億ドルを保有していた。
さらに、日本円で360億ドル、カナダドルで190億ドル、オーストラリアドルで60億ドル、シンガポールドルで18億ドル、スイスフランで約10億ドルを保有していた。
つまり、世界中に凍結されたロシア資産の総額約3550億ドルのうち、EUが保有しているのはその半分強にすぎない。にもかかわらずEUは、「まるで全額を握っているかのような」態度で振る舞ってきた。当初は、この資金をウクライナ戦争の継続のために使えるものとして多くの期待が寄せられていた。だが、たとえトランプが「手を出すな」と言わなかったとしても、国際法上、EUが2070億ユーロを没収できるという法的根拠は極めて薄弱である。このことが、戦争継続というプロジェクトにとって最後のとどめとなる可能性が高い。
12月18日、ブリュッセルでEU首脳会議が開催されるが、そこでは現実を受け入れざるを得なくなるだろう。つまり、この凍結資金が使えないとすれば、2026年にウクライナが計上している800億ドルの国家予算を支えるために、EU加盟国自身が救済パッケージをかき集めなければならないという現実だ。最近EUはさらに20億ユーロの「融資」を発表したが、その程度の金額では、巨大な財政の穴を埋めるにはまったく不十分である。
EUの真の問題は、「ロシアの資金に口先だけの責任を押し付けている」ことにある。ECB(欧州中央銀行)のクリスティーヌ・ラガルド氏らが突きつける「もし資金を戦争に使うことになったら、EU各国が自国の予算で保証せよ」という要求に対して、加盟国は保証を拒んでいる。この信頼の欠如が、ゼレンスキー政権への西側の支援に致命的な打撃を与えるかもしれない。というのも、キエフでは現在、汚職スキャンダルが相次ぎ、重要な側近が辞任、あるいは国外逃亡するなど、ゼレンスキー自身が政治的終焉を迎えつつあるからだ。
さらに、ゼレンスキーが発表した28項目の「和平プラン」は、多くの専門家の間で「生まれた瞬間から死んでいた(dead on arrival)」と評されている。現在、西側の論調の主流は、「彼の時間は終わった」というものだ。
ゼレンスキー自身が和平案に署名できないのは、その署名と同時に暗殺されることが懸念されており、そうなると停戦が破られ、両陣営が再び戦闘に復帰すると見られているからだ。西側の唯一の希望は、ロシア側に信頼され、かつ「署名に実効性がある」新たな指導者に政治的・財政的資本を注ぎ込むことだが、そのためには、和平署名後、自国軍がウクライナに大量に流入しないという保証も不可欠である。
しかしEU首脳たちには、この点が一向に理解できない。そもそもこの戦争は、ウクライナがEUおよびNATO加盟に向けて強引に引き込まれ、そして西側(特にトランプ政権の2017年、第1期目)によって軍備・訓練支援を受けたことから始まったのである。
もう一つ、EU各国首脳(英国も含めて)にとって耐えがたい事実がある。それは、自国の経済がすでにひっ迫しているということだ。ベルギーの首相は最近の記者会見で、「ロシアの資金を使って戦争を支援することには反対だが、もしそうするなら、EU以外のパートナーと共同で行うべきだ」とほのめかした。彼が示唆したのはロンドンだろう。だが、誰かが彼に教えてやるべきだ。英国経済は、長年の無謀な借金政策のツケで、毎年1200億ポンドもの債務利払いに苦しんでおり、崩壊寸前にあると。ロシアの凍結資産の使用を保証することなど、英国にはまったく不可能だ。だがEUの幻想の世界(La-la land)では、こうしたナンセンスが翌日のニュースネタとして好都合なのである。
トランプが「ロシア資産には手を出すな」と命令したことは、EU首脳に冷や水を浴びせた。彼らがウクライナ戦争という「ブラックホール」に投じられる資金を使い果たしたことを、はっきりと認識させたのだ。そしてEU内部でも、この戦争支援資金がゼレンスキー周辺の「金目当ての取り巻き連中」の懐に入り、国際資金を吸い上げながら政権を維持するという構図になっていることを、密かに認知している。
最近、ゼレンスキー首席補佐官が辞任し、続いて彼の親友でビジネスパートナーが1億ドル規模の電力会社不正流用事件で逮捕されそうになったため国外逃亡した。これは、キエフでどのような「ビジネスモデル」が実際に機能しているのかを最も明確に示している。こうしたスキャンダルは氷山の一角にすぎないことは明らかで、西側指導者たちも、もはや目をそむけ続けるのは難しくなっている。
そして今、12月18日のEU首脳会議において、加盟国首脳たちが直面するのは、国民の税金をさらに巧妙にだまし取る方法を考え続けることではない。むしろ、「ゼレンスキーとその戦略を引き続き支持できるのか」が問われるのだ。
しかも今や、ブリュッセル内部でも高官の汚職スキャンダルが報道され、ウルスラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長に対する汚職疑惑も高まっている。こうした状況下で、EU首脳が自国民からの不信の声を無視できるはずがない。庶民の多くは、今年のクリスマスに「自宅で凍え死ぬ」ことへの恐怖に直面しているのだ。
この首脳会議の最優先事項は「政治的生存」である。ただし、それはゼレンスキーのためではなく、彼ら自身のための生存である。
訳注:
アンドレイ・マルチャノフよれば-- EUによって、ロシア凍結資産は”既に”使い込まれていた--というお話。 もう存在しないという。
EUによって、ロシア凍結資産は”既に”使い込まれていた--というお話。もうないそうだ。どうすんの...
— Locom2 (@locom2) December 8, 2025
🐱貧すれば鈍す:「人は貧しくなると心に余裕がなくなり、判断力や知恵が鈍ってしまう」ということ。 pic.twitter.com/d9uc3yFlyn
