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イスラエルのシンクタンクが米国との防衛条約を提案⚡️スティーブン・ブライエン

Israeli Think Tank Proposes Defense Treaty with the US

ティーブン・ブライエン著:28/09/2023

イスラエルの著名なシンクタンク、国家安全保障研究所(INSS)は、イスラエルが米国との安全保障条約を求めることを提案した。 この提案は論説形式であり、署名はない。 したがって、この提案がINSS所長のマニュエル・トラジテンベルグによるものなのか、それとも同機関の研究スタッフの総意なのかは定かではない。 このような防衛条約は、イスラエルの行動の自由を阻害し、イスラエルを米国に不可逆的に縛り付けるという理由で、イスラエルの安全保障体制の大半は長い間反対してきた。

INSSはもともとテルアビブ大学内に設立された。 初代所長はアハロン・ヤリブ少将だった。 設立当初は戦略研究センターとして知られていた。 その後、ジャフィー戦略研究センターと改称され、2006年に現在の名称となった。 2021年まで最も勢いのあったトップはアモス・ヤドリン将軍だった。 現在のエグゼクティブ・ディレクターであるマニュエル・トラジテンベルグは、軍や諜報機関の出身ではない。INSSはもはやテルアビブ大学の一部ではない。

Image from Gyazo

アモス・ヤドリン

政策提言によれば、イスラエルが防衛条約を追求する理由は、表向きはサウジアラビアがそのような条約を追求しているからであり、イスラエルも防衛条約を申請しなければ、サウジの提案は受け入れられないというものだ。 アメリカ議会でサウジアラビアに深刻な反対があるのは事実であり、その主な理由は人権問題である。 防衛条約を結ぶには、米上院で3分の2以上の賛成が必要だ。 サウジアラビア単独では上院の承認を得られないだろうし、イスラエルの条約とサウジの条約を「束ねる」ことは、INSSがどうにかできると考えていても、おそらく不可能だろう。

間もなく核兵器製造を開始するイランに対する行動の自由が強く求められるイスラエルが、なぜ防衛条約を望むのかは決して明らかではない。 そもそも米国は、イランの核兵器保有を絶対に許さないという主張が多々あるが、事の真相は違う。 たとえば現政権は、イランの核開発プログラムに関する合意が成立する前から、イラン政権に数々の譲歩を提示することで、イランの核開発路線の前進を手助けしている。 その好例が、バイデン政権が隠蔽してきたイランの核査察違反に関するIAEAの調査結果である。

イスラエルにとってこの問題は難しく、イランが核兵器を配備するまで待つことはできない。その時点で核兵器を排除しようとすれば、イランが核兵器を使用するか、イスラエルが先制攻撃する可能性がある。 ネタニヤフ首相は国連でこのような発言をしたが、首相官邸は発言を「撤回」した。 イランが核兵器と長距離ミサイル発射システムを求めている状況下で、防衛条約にどのような価値があるのかはわからない。

同様に、サウジアラビアアメリカの防衛条約からどのような恩恵を受けるのかもわからない。アメリカはテヘラン核兵器増強を阻止するために空爆する可能性は低いからだ。サウジアラビアアメリカの防衛条約は、イランがサウジアラビアを直接攻撃した場合、サウジアラビアを助ける可能性がある。しかし、イラン領土から直接攻撃されたアブカイク石油施設やクーライス石油施設がそうであったとしても、ワシントンは何もせず、ほとんど何も言わなかった。

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もちろん、イランが代理人を使ってサウジの標的に弾道ミサイル無人機、巡航ミサイルを発射すれば、サウジにとっての問題は複雑になる。これらのほとんどはイエメンから、一部はイラクから発射されている。アメリカはこのような攻撃に対抗するための援助をほとんど提供していない。

イスラエルには他にも複雑な問題がある。 ヒズボラハマスイスラム聖戦などの非国家主体による攻撃や、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸を起点とする攻撃に防衛条約が適用されるだろうか? 米国は、テロ攻撃を受けてもイスラエルを助ける義務を負うような条文には決して同意しないだろう。 実際、イスラエルイスラエル市民に対するテロ攻撃に対するアメリカの対応は、いつもせいぜい控えめなものだ。

おそらく防衛条約はロシアの攻撃からイスラエルを守るだろうが、ロシアが直接攻撃してくる可能性は極めて低い。 しかし、ロシア側は、米イスラエル間の防衛条約を、イスラエルがワシントンとモスクワの地政学的闘争の片棒を担いでいると見なすだろう。 これは、ロシアがシリアとイランへの武器供給を強化することを促す可能性がある。 実際には、イスラエルとロシアは協力し、対立を避けようとする現実的な方法を見出してきた。 特にロシアがイランにSu-35を含む最新兵器を供給し始めると、それが長期的に維持されるかどうかは未解決の問題である。

INSSは、防衛条約によって米国との防衛技術協力が促進されるかもしれないという点を指摘している。 多くの点で、イスラエルはすでに米国の頭脳集団であり、米国の安全保障にとって重要な多くの分野で先駆的な役割を果たしている。 例えば、イスラエル弾道ミサイル防衛機構はアメリカのミサイル防衛局と提携しており、最近ではアロー4の開発という形で大気圏外防衛を含む防空面で協力している。 イスラエルはまた、高度なセンサー・トゥ・シューター技術、高度なマイクロエレクトロニクス、人工知能を急速に開発している。 こうした技術やその他の技術は、インテルマイクロソフト、グーグルなどの重要な米民間企業はもちろん、米国防総省や米防衛企業がすでに求めているものだ。 防衛条約によって技術共有や協力が改善されると考える理由はない。

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INSSは、「正式な同盟国として、イスラエルアメリカの先進兵器や独自の技術にアクセスすることは長期にわたって保証される。 残念ながら、防衛条約は米国の兵器や独自技術へのアクセスを保証したり、確約したりするものではない。 技術共有は常に、時と状況によって規定される国益の問題である。 F-35ステルス戦闘機を例にとってみよう。 これはアメリカの第5世代戦闘機で、エキゾチックな技術が詰め込まれている。 F-35を製造するアメリカの巨大防衛企業ロッキードは、イスラエルF-35を採用させ、F-15の新型最新版を購入させないことを切望した。 ロッキードは、イスラエルF-35を最前線の戦闘機として採用すれば、他の顧客もF-35に引き寄せられると、正しく信じていた。 ロッキードは正しかった。 ロッキードアメリカも、この取引に防衛条約を必要としなかったし、実際イスラエルは、ヨーロッパや日本の主要パートナーとの協力協定を上回る技術面での譲歩を得た。

明確でないのは、なぜINSSが今イスラエルに防衛条約が必要だと判断したのか、ということだ。 サウジアラビアを助けるためなら、そうする理由はない。イスラエルに将来の安全保障を米国に依存させるというのが本当の目的でない限り、米・イスラエル防衛条約を支持する証拠はほとんどない。 もしそれが目的なら、イスラエルは米国の援助に頼ることを警戒すべきだ。イスラエルは自力で防衛しなければならないのだ。

要するに、米・イスラエル防衛条約は時期尚早のアイデアなのだ。